vol.21 ヘアーメイク 宮内三千代さん


さて今回でたまこのスタッフインタビューも最終回です。みなさま、ご愛読ありがとうございました。本当はまだまだ紹介したい仕事はありますが、それは又の機会に!!

さて、最後を飾るのは、ヘアーメイクの宮内三千代さん。たまこもとってもお世話になった方です。 とにかくパッパとよく気がつくんですよね。ヘアーメイクさんは多分一番役者さんと密に接するパート。客観性と気遣いの両方が必要だと言う気がします。それではどうぞ。


【略歴】
1995年「みんな~やってるか!」
1996年「Kids Return」
1998年「HANA-BI」
2001年「ウォーターボーイズ」
2001年「ピストルオペラ」
2001年「冷静と情熱のあいだ」
2002年「JUSTICE」
2002年「Dolls(ドールズ)」
2003年「Jam Films(ジャムフィルムス)」

メイクの仕事について教えてください

メイクにも色々ありますね。映画やテレビドラマなど映像作品の場合は、台本から読み取った人格や性格を監督のイメージに合わせながらメイクや髪型、容姿で表現する手助けをしますし、雑誌などのスチール写真では、その《テーマ》に合わせてモデルさんを作りあげるんです。目的によって違うんですよ。

外を歩いている人は皆、メイクや髪型の参考になります。面白いと思う人を見かけたら、何かその雰囲気に合う作品の時に試してみたり…雑誌からも情報を得ます。

メイクって、「映える顔」と「映えない顔」があるんですよ。凹凸のある顔ほど映えるけれど、そういう顔立ちは一寸化粧を入れただけで、きつく見えたりしますしね。唇をつぶして小さく見せたり、目にラインを引いて大きく見せたりも出来ますし…傷や簡単な血のりも作ったりします。

現場では、アシスタントとの二人体制がベストですね。メイクは準備パートと言われますが、実際は現場で本番前に化粧や髪型を直さなければいけない所が大きいんです。そういう実際の現場でアシスタントには勉強させてあげたいですしね

監督や役者と接する時はどうするんですか

初めての監督の場合はやっぱりお互いに探り合いです。(笑)出来るだけこちらが発言するのではなく、相手に喋らせる事を心掛けます。何本かやっている監督でしたら、勝手が分かっているのでこちらから提案もしますけれど。

役に対する監督や役者との意見の違いに悩んだりしても、その方がやりがいがあります。自分の思い通りになるだけのものではつまらない。苦しみから学んだものの方がいいですね。

どうやってその役のヘアーメイクを決めたりするんですか

勿論、キャラクターに添ったものを考えるんですが、テレビの場合は、その時の「流行り」も意識して入れますね。映画の場合は、いつ見ても「古臭くない」ようにします。ずっと残るものですから。

時代劇については、図書館や神田の古本屋さんで調べたり…この前は芸子さんの話でしたので、女優さんが紹介してくれた銀座のおばあさん美容師さんに一緒に話を聞きにいったりしました。それから昔の祖母や母の時代の写真も参考になったりしますよ。

アップ一つでも、作るメークさんによって違うんです。カチッと作る人、柔らかく作る人。カチッと作るのは美容師さんあがりの方が多いかな。映像系出身の人は柔らかい感じが多い。両方が出来ないとダメですけれどね。

ヘアーメイクは朝の入り時間も他のスタッフが8時だとしたら、それより一時間以上は早いんです。初日は一番たいへん。誰を何時に呼ぶか、一人でやらなければいけない事も多く、その配分を上手にやらないと。女優さんを適当に扱うような事はしたくないですしね。ベテランの方は、メイクのあとの着替えも考慮してくれているので、被るセーターなどは着てこないですし、安心しています。

メイクさんになったきっかけはなんでしたか

昔からお芝居が大好きで、中学・高校と演劇部に入っていました。東京に出てきて一旦は就職したのですが、ある時テレビで特殊メイクの番組を見て、「やっぱり面白そうだな」と…それでメイクの学校に通いましたが、特殊メイクよりも普通のメイクの方が奥深いと感じるようになって。元々芝居が好きでしたから、映画をやりたいと思って、その後美容学校にも通いました。

やめたいと思ったことはありますか

それは、何度もありますよ~。(笑)特にアシスタントになってすぐの作品の時、色々と分からない事も多かった時に「もう一切聞かないでね」と担当メイクの方に言われた事があったんです。その後、その方と良いコミュニケーションが取れなくなってしまって…仕事を辞めたいと思ったんですが、何故かそのままうちの師匠の(※1)田中の下に就く事になったんです。でも、色んな事を聞くのが怖くなってしまっていて。「以前はあんなに質問していたのにどうしたの」と聞かれ、訳を話したら「そんな事で落ちこんじゃダメ。なんでも聞きなさい」と涙の差し方やライティングにあったメイクの方法など大切な事を沢山教えてもらいました。うちの社長でもある田中ですが、キャリアが長い今も沢山勉強しているんですよね。私にとってはすごい人です。

ヘアーメイクにとって大切な事はなんでしょうか

やっぱり私達の仕事は対-人(ひと)なんですね。ですから役者さんの体調の変化も見逃してはいけないと思います。メンタル面や睡眠不足が肌にも現れますから。私としては《空気のような存在》でいたいですね。自然体の中で、「あれ?いつ直したの」という風に仕事が出来たらいいと思っています。技術は誰でも頑張れば出来るようになるから大丈夫!!それよりも人に対して気遣えるといいですね。人の心を大切にしてあげるという事が必要かな。

独り立ちについても、「会社のやり方」や「個人差」によっても違いますので、何年では応えられないです。ずっとこの仕事をやっている私達でさえ終わりがない勉強の日々ですから。

テレビと映画では何が大きく違うものなんですか

ベースに使うファンデーションが違ったりします。フィルムの場合、ピンク系に転んだ方が綺麗と言われていたり、テレビは多少厚くのせても大丈夫だったり。映画の時は、メイクのチェックも実際の役者さんの近くにいって確認しないとダメ。テレビは逆にモニターの方が見た目がわかりやすいんですよ。

そう言えば昔のスティックファンデーション…いわゆる「ドーラン」といわれたものにはNKとWKがあったんです。NKがピンク系で、WKがオークール系。映画会社によって色のトーンの違いがあったりしたので、「こっちの色で」という指定もあったようです。顔色が悪く見えないか、赤過ぎたりしないかカメラテストで確認します。時間があれば2パターンやらせてもらったり…現場で見たのとラッシュで見るのでは違うという事があるんです。

メイクさんになるにはどうしたらいいのでしょうか?

現場に出ている人のアシスタントになるのが一番早いと思います。うちの場合は「やりたい」と来た人に履歴書を送ってもらいます。だけど、役者さんに会いたいという意識で来る人は続かないんですよね。映画って拘束も長いですし、考えているよりも綺麗な仕事ではないから。ショーや雑誌の仕事は綺麗な格好をしていられるけれど、映画のように芝居のあるものは綺麗なものばかり作る訳ではないんですよね

今後の夢や目標について教えてください

いつか、新宿のガード下の展示のところに事務所の作品が並ぶことが夢ですね。沢山の人に私達の仕事について知ってもらえたらと思います。そして後輩を育ててゆきたい。個人的には…とにかく色んな監督と仕事がしたいですね。主役の女優さんが専属メイクを連れてこなくても安心してまかせられる、と言われるような。あと私の場合、男っぽい作品が多いので(笑)、女性がメインのものをもっとやってみたいと思っています。

若い人を上手に育てるよい方法はありますか

私は早くに独り立ちしたので、下につけたアシスタントも多く、その分ダメにしている数も多いかもしれない。(笑)でも今は、まず《泳がせること》が大切なんじゃないかと思います。ついつい自分をしっかり見せたいと思うと、アシスタントもしっかり見せようとしてしまうんですね。でも、あせって物事を教えてもしょうがない、人にはそれぞれペースがあり、いい所があるんです。自分が一生懸命の時って、他の人のいいところが見えなかったりするんですよね。自分が出来た事がなんで若い人は出来ないのかって思ってしまう。でも、師匠の田中からよく「同じ秤にかけちゃダメ」と言われました。確かに「時代」の違いもあると思うんですね。でも、この中で若い人を育てないといけない。何よりも忘れていけないのは「現場って楽しいよ」と若い人に伝える事です。苦しいことだけを与えてはいけない。自分がスタッフの一人として大切な歯車である事を教えてあげたいですね。

メッセージをお願いします

業界の人って、いい加減に見えたり古臭いところもあるんですね。ある程度「縦社会」も残っていますし…芸術家だなと感じる事も多く、変わっていると見られやすいかもしれません。礼儀作法なんかも大事にしますしね。そういう点が若い人にとっては面倒くさいと多少感じるかもしれませんが、大の大人みんなが小さな一つの事にこだわって、一つの事をやり上げた時の充実した達成感も若い人に味わって欲しいと思います。辞めるならそれからでもいいのかな…と。すぐに辞めてしまうのは勿体無い。これからは若い人の新しい感覚も大切だと思いますし。現場はたいへんな事もたくさんありますけれど、楽しいことも一杯あるんですよ。(笑)

インタビュー後記

実はもうずっとずっとインタビューの依頼をしていました。ここ半年ぐらい。(笑)でも、いつも忙しくて今まで実現出来ずにいました。最終回にどうにか間に合ってよかった~。

宮内さんは現場ではもしかしたら、とっても「男性的」に見えるかもしれません。(笑)あまりにもパッパッと素早く行動するからです。でも、仕事を離れればお花や可愛いものが大好きで誰よりも女性だな、と思います。自然に出る気遣いにそういう面が自然に現れているんだと思います。たまこも見習わなければ!!(だんなさんを大事にしている点も見習うわっ)

…また三千代さんとお仕事したいな。そして地方ロケで美味しいお店を見つけて秘密で食べにいきましょうね。(イタリアで内緒でおっきなアイス食べたでしょ??)

(※1)田中マリ子…宮内さんが働くヘアーメイク会社「ベレッツァ」の社長兼ヘアーメイクアーティスト。担当作品に「スーパーの女」「ホワイトアウト」「EUREKA」「みんなのいえ」等がある。